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アートウェットな人工生命:日本初国際ワークショップ 今日、科学や工学をはじめとするさまざまな技術の進歩により、プロトセルや自走性油滴、化学システムとロボットのハイブリッドといった、「生命らしさ」をつくる技術が加速している。この進歩には、アーティストも高く注目し、芸術のための新たな素材としての可能性に挑戦し、多様なビジョンを構築している。このワークショップでは、「プロトセル」の世界的な権威であるラスムッセン教授を迎え、教授による基調講演と、ハンズオン形式の実践という2つの軸で構成されている。理論と実践が融合した全体を通じて、以下の2つのテーマを探求する。①21世紀のアートとウェットな人工生命の関係について知り、新たな視点を得、人工生命に近く最もシンプルなモデルであるプロトセルについて実践を通じ理解を深める。②生命らしいウェットな人工生命をつくる技術にともなって生まれる美学や哲学、倫理性などの課題について、アートに期待される使命や可能性を議論する。

企画:Juan M. Castro and Akihiro Kubota     主催 :東京大学大学院総合文化研究科    

協力多摩美術大学メディア芸術コース、 FlinT、 東京大学大学院総合文化研究科豊田研究室

 

 

 特別講演

 「異なるメディアでのミニマル生命」

   プロトセル、生きている技術、BINC 革命 (Bio-, Info-, Nano-, Cogno-technologies)

 

 

 

歴史を振り返えれば、生産手段やコミュニケーション能力を変革する新しい技術が登場するたび、社会は変容していくる傾向にあります。今日、バイオロジー(生物学)、情報技術、ナノテクノロジー、認知科学(これらBio-, Info-, Nano-, Cogno-technologiesの略であるBINC)の融合によって、未来に向けた、生きている技術とインテリジェント技術が進展しています。重要なのは、これまでは民主主義をはじめ、政治、法律、人権、市場経済、資本主義、そして学校や地域社会が、工業化時代とその技術の産物であったのに対し、私たちは今、BINC時代を迎えようとしています。これからのポスト工業化時代、BINC時代のグローバル社会と経済が今後どうなっていくのか、それは誰にも分かりません。

18世紀にイギリスを主に起こった産業革命は、物がない状況と、すべてにおいてより多くを求める欲求から生まれました。単純に多ければ多いほど良かったのです。一方でBINC時代は、世界のもっとも豊かな国々で、より多いことはより良いことではない、という状況から生まれました。BINC技術は、実質的に無駄のない豊かな世界を実現しようとするものです。一部の人々がすべての人が求めるものを製造できるようになる日も近いかもしれません。それは、誰もが自分専用の製造業者( Personal fabricator)を持ち得る世界です。ちょうど私たちが今日、パソコンやプリンターを自宅に持っているのと同じです。必要なもの、欲しいもののコードをデザインしたり、ダウンロードして、ほぼすべてのものを製造できるようになります。これらのものは生命のような特性を備えているため、ほとんどが再生利用できます。この「生きている技術」が実質的にバイオロジーや自然のサイクルの一部になるのです。

生きている技術のもつ革新的な技術を用いた生命プロセスの潜在的な有用性は、生命そのものが有している興味深い特性から生じます。生命体の特徴とは、エネルギー効率、持続可能性、ロバスト性、自律性、学習能力、自己修復力、適応、生殖であり、何よりも重要なのが進化です。これらの優れた特性は、これまでの技術では、実現が難しく、過去数世紀にわたって多様な問題を引き起こしてきました。つまり、生きてない素材から生きている素材を作り出すこと、異なるメディアで生命プロセスを実行することは、生命に関わる根幹、哲学、倫理性などの課題を提起し、これに取り組むことに他なりません。

私は、BINC時代は有意義な仕事と繁栄の機会を与え、すべての人に自由の機会を与えると考えています。適正な政治体制、法体系、経済構造の下、BINC技術をできる限り最善な形で実行すれば、私たちが望む希望が、叶えられる世界を形作ることができます。アーティスト、デザイナー、建築家は、BINC時代に新たな技術が人間のあり方の根幹を変える過程にあることを認識しつつ、包摂的で持続可能な社会のビジョンを構築しなければならないのです。

 

スティーン・ラスムッセン教授|Professor Steen Rasmussen

現在、南デンマーク大学のCenter for Fundamental Living Technology (FLinT)の研究責任者と物理・化学部門の研究ディレクターを兼ねる。米国サンタフェ研究所の外部研究教授も務める。

ラスムッセン教授は2004年から2005年にかけて、Los Alamosの自己組織化システムチームのチームリーダーであり、コペンハーゲン大学のゲスト教授を務めた。彼は、ロス・アラモスでプロトセルを作る“LDRD-DR”プロジェクトと宇宙生物学プログラム“生命の起源”に参画し、科学の手法である実験とデジタルを用いたコンピュータ科学を合わせてプロトセルを開発した。さらに、欧州連合(European Union)が主催する“プログラム可能な人工細胞進化(Programmable Artificial Cell Evolution:PACE)”プロジェクトにディレクターとして参画し、1980年代後半すでに人工生命のフィールドにおいてパイオニアであった。2004年にイタリアのヴェネツィアに設立された“European Center for Living Technology”の共同設立者。

参考図書:Steen Rasmussen 他「Protocells: Bridging Nonliving and Living Matter」MIT Press, 2008.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  6月19日 午後2時 | 多摩美術大学八王子キャンパス レクチャーホール C  ※通訳有り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            

 

 

本ワークショップはJSPS科研費 16K16741の助成を受けたものです

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